恐れていたのは俺の方かもしれない

兄がポツリとそう言った


「俺がアルを抱く事で、アルが汚れてしまうんじゃないかって。

 俺がアルを変えてしまうんじゃないかって」

もしかしたら、心のどこかでそう思っていたかもしれない


それを聞いてビックリした



「僕が汚れるってどういう事。僕はそんなに綺麗な存在じゃないよ?」

ましてや兄さんが汚れてるなんて、そんな事ない。絶対に

罪を背負っていても、あんなにいつだって輝いていたのに



「綺麗なだけの人間なんていない。そんな事は分かってるんだけどな。

 それでもアルは俺の中の一番綺麗な場所に住んでるからさ」



温かさとか優しさとか、そういう綺麗な感情と共に

アルフォンスの存在は常にあったから



兄はそんな風に自分を見ていたのか

アルフォンスは頬が少しだけ火照るのを感じた


でも、だからといって触れてもらえないのは嫌だ



「僕は僕だよ。例え兄さんとこうなった事で変わったとしても、それが僕だ」

触れて欲しいと望んだのは僕。ならば

変化を望んだのもきっと僕自身



いつまでも兄妹のままではいられなかった

お互いがお互いを望み、想いが通じ合った

そうしてやっと結ばれた




貴方を愛して、貴方に抱かれて変わっていくのなら、その変化すら愛おしい

それくらい貴方は僕の中で大きな存在



だから僕も、兄さんの中でそれくらい大きな存在になりたい

結構僕は欲張りで我が儘だから

兄さんが他の人を見たりしないように、僕だけを見ていてくれるように

兄さんの中を僕で埋め尽くしてしまいたい



「ねぇ兄さん。変わるなら一緒に変わっていこう?」

だからもっともっと抱き締めて



微笑みながら告げると、兄が嬉しそうに笑って

そっと頬を撫でた後、ギュッと抱き締めてくれた

温もりが心地よくて、涙が出そうな程に幸せになる



こんな幸福をくれるのは、世界中で兄さんただ一人なんだ



愛しい人。大好きだよ

言葉だけでは伝えきれない想いが、触れた箇所から伝わると良いのに



そっと兄さんの顔が近づいてくる気配に、僕は目を閉じた

優しくて熱い口付けの予感に、少しだけ胸を震わせながら
















Back