暁月夜の祈り 後編
弟を抱えたまま部屋に辿り着いた正守は、行儀が悪いなと思いながら足で襖を開け室内へと入った。 二組用意された布団は、まだ畳まれたままで押入の中に置いてある。正守は一瞬考え、すぐにその場に片膝を着いて腰を降ろすと、その膝に良守を乗せた。 肩を抱いていた右手はそのままに、左手で懐を探り1枚の札から式を出す。命令通り布団を敷いた式がぽわんと音を立てて消えると、その布団の上に良守の体をそっと横たえた。 ぐっすりと寝込んでいるのか、良守はぴくりとも動かず気持ちよさそうな寝息をたてている。目を閉じていると強い意思を感じさせる瞳が見えない分、年よりも幼く見えた。 大きくなったと思ったけど、眠る姿は昔とちっとも変わらない。目にかかりそうな少し長めの前髪をそっと払ってやる。 良守は昨夜もいつも通りに務めに出て、今日は夜行に来る為早めに起きていた。蜈蚣で来ればあっという間なのは分かっていたが、たまにはゆっくりした旅も良いだろうと思い陸路を移動したし疲れて当然だ。 帰りは蜈蚣で送った方がいいかもな、と考えながら正守は眠る弟の体にタオルケットを掛ける。文机に置いてあるデジタル時計の表示は「22:17」になっていて、自分が眠るにはまだ早い時間だと思いつつ隣に敷かれた布団に横たわった。 仕事柄不規則な眠りには慣れている。徹夜なんて珍しくもないし、休める時に眠っておかないと体が保たないからだ。 眠る弟の横顔をもう一度見てから正守も目を閉じた。3時間後くらいには起きる事になるだろうという予感を感じながら。 「…?」 パチパチ。深い眠りから唐突に目覚めた良守は、違和感を感じて数度の瞬きを繰り返した。見上げた目に映る天井が、どうもいつもと違うように思える。 訝しげに眉を顰めてふと人の気配に隣へと頭を向けると、そこにいたのは兄の正守だった。 驚いて声が出そうになるのを何とか堪える。兄と恋仲になって多少の月日は流れたが、忙しい正守は夜を共にしても朝まで過ごす事は少ない。だからこうして横に寝ている姿というのは数える程しか見た事がなくて、思わず凝視してしまう。目を閉じた正守の顔なんて滅多に見れないから貴重だ。 静かな寝息。ゆっくりと上下する胸。目を閉じても尚端正な顔立ちは良守の目から見ても男らしくて、同じ男としてコンプレックスを刺激される。 自分だっていつかとは思うのだが、どうにも兄が自分と同じ年頃だった頃を思いだしても身長から何から負けているのだ。 せめて身長くらいは、追い越すまではいかなくても同じくらいになりたい。父さんも母さんも背は高い方だし兄はそれよりも高いんだから、自分だって素質的には充分だろう。 うんうんと一人で頷いていた良守は、目の前の人物が目を開けた事に気付かなかった。 「目が覚めたか。」 「へ?うわあ!」 急に声を掛けられて驚いて布団から起き上がる。タオルケットを抱え込む良守の隣で、正守がのんびりと起き上がった。 「この馬鹿兄貴!狸寝入りしてたな!」 趣味悪ぃ!と怒鳴る良守に、正守は先程まで眠っていたとはとても思えないような顔で口端を上げて笑う。 「俺はちゃんと寝てたよ?良守があんまり熱い視線で見つめるから目が覚めただけで。」 熱い視線でなんて見てねえ!と怒鳴る良守を無視して、正守は眠る前に見た文机の時計をもう一度見た。日付が変わり、もうすぐ1時という時間。やっぱりなぁと呟くと、良守が不思議そうにやっぱりって何だよと問いかけてくる。 「お前、いつもこれくらいの時間には烏森に行く準備してるだろ。きっと起きるだろうと思ってたよ。」 そう言われて、良守も時計を見た。確かに午前1時頃から丑三つ時を挟んだ3時くらいまでが仕事の時間だ。先程の唐突な目覚めに納得する。 「習慣って恐いな。せっかく今日は朝までぐっすり寝てもいいってのに。」 寝ることが大好きな弟は、幾分がっかりしたかのように肩を落とした。 「でも逆に考えると、習慣が崩れる方が良くないかもよ。帰ってからが辛くなるでしょ。」 正守の言葉にそうかもしんないけど、と答えながら良守は不満そうだ。その様子に正守が苦笑する。 「なあ良守。お前数時間だったけどぐっすり寝てたし、目も冴えちゃったんじゃない?」 言いながら正守は枕元にあった水差しの水をコップに注ぎ良守に渡した。寝起きで喉の渇いていた良守はそれを有り難く受け取ると一気に飲み干す。 確かに目は冴えていたからそう答えると、正守は箪笥の引き出しを開けバスタオルを取り出した。1枚でいいか、と兄が呟くのが聞こえる。 「今から風呂でも入んの?」 修行が終わった夕方に風呂に入ったのを知っている良守は小首を傾げる。そんな弟に正守が振り返って笑いかけた。 「たまには烏森じゃない所で、深夜デートも良いかなって思って。」 おいで、と差し伸べられた手に、良守がキョトンとした顔をする。昔、何度も自分に伸ばされた大きな手。その手の主が大好きだったからこそ、右手を見せたら嫌われるんじゃないかと思うと素直に取れなかった。その手はいつしか差し伸べられる事もなくなり、近かった距離は手の届かないくらい遠くなって。それが嫌だと言い出せないくらいにその存在は離れていたのに。 今はこんなに近い。例え普段住む所は遠く離れてても、心は離れてないって思えるくらいには。 自然な動きで良守は正守の手を握ると、途端強く握り返された。どこに行くとも行くのかとも話さず、手を引かれるままに二人で歩く。夜行の屋敷を抜け裏山に入ると途端に山深くなり、月明かりも届かなくなる。だが仕事柄夜目が利く二人には大した苦にもならない。 10分くらい歩いた頃、良守の耳に水の流れる音が聞こえてきた。 「着いたぞ。」 目の前に広がっていたのは河だった。満月の光を反射しながら輝く水の流れは、それほど大きくはないが清流と呼べる程美しい。 「…きれいだ。」 良守は一瞬気取られたように息を飲み、川辺に近寄って水を一掬いすると一言呟いた。そのどこか呆然としたような響きに正守も頷く。 「良いだろ、ここ。俺の一番のお気に入りの場所なんだ。」 特に夏は涼しくて最高だよと言いながら、正守は近くの岩に座ると草履を脱ぎ、浴衣の裾を上げ足を水に浸した。 「やっぱ冷たくて最高。お前も来いよ。」 手招きされて良守は兄の横に座った。スニーカーを脱ぎ背後に置く。 「この辺の石はまだ尖ったのが多いから、足元に気を付けろよ。」 兄の注意に頷きながら良守はそっと足を浸してみた。想像よりも冷たい水の感触に思わず肩を竦める。だがすぐにそれにも慣れると、後は心地よさだけが感じられた。 眩いばかりの月明かりの元、水に濡れた河原の岩がぼんやりとした光を放っている。河の流れは上流にしては穏やかで豊かな水量があった。 水音を立てて足を軽く蹴り上げてみると、透明な滴が一瞬だけ月光を写して空中と水面に消えていく。その様子が何となく黒姫を思い出させた。 「なあ兄貴。黒姫は水浴びとかしないの?」 弟の意外な言葉に、正守は僅かに目を見開いた。黒姫は正守の能力の一部が具現化したもので実体があるわけではない。だから水遊びという発想はなかった。 「どうだろ。雨の気配は好きみたいだけど、水浴びさせた事はなかったな。…黒姫。」 物は試しとばかりにその名を呼んでみる。いつものように背後から現れた黒姫は大きく空中に飛び上がると、正守の意思を読みとったのか水中に姿を消した。 パシャ、パシャン。何度も水面を跳ねたり潜ったりしている姿に、喜んでいる波長が伝わってくる。 「どうやら水遊びも好きみたいだな。今まで気付かなくて悪い事した。」 知ってたら此処に来る度に出してやったのに、と正守が苦笑する。 「黒姫って兄貴の分身みたいなもんなんだろ。だったら兄貴が好きな物は好きなんじゃね?」 「ああ、その辺深く考えた事なかったけど、言われてみるとそうかも。じゃあ俺の好きなものは黒姫も好きで、嫌いなものは黒姫も嫌いって事か。」 「って事は、黒姫が物が食えたら、好物は間違いなく甘いものだな。」 楽しそうに笑う良守の言葉に、そうだなぁと正守は答えながらふと気付いた事があった。成る程と一人で納得していると、良守が不思議そうな顔をする。 「何が成る程なんだ?」 「うん?いや、何て言うか。黒姫ってさ、お前に会うと喜ぶんだよね。」 今まで正守は、黒姫が良守を好きなのは、弟がそういったものに好かれやすい質だからだと思っていた。まあそれも含んでいるのかもしれないが、単に自分の気持ちが黒姫に反映されていただけだったのかと気付いて可笑しくなる。 「黒姫も、お前のこと好きだよ。」 笑いながら告げると弟は一瞬ポカンとして、次の瞬間言われた言葉の意味が解ったのか頬を真っ赤に染めた。 ばっかじゃねーの、と悪態をついて顔を背けた弟は、水面をバシャバシャと蹴り始める。照れているのが丸分かりで、そんな様子が可愛くて仕方ない。 良守に対して特別な感情を持っているという事は昔から解っていた。だがそれが恋愛感情も含んでいると気付いたのはそう昔の事ではない。だが思い返すと3年ぶりに実家に帰り、初めて良守に黒姫を会わせた時から黒姫は弟を気に入っていた。自分では気付かなくとも黒姫には通じていたらしい。心の奥底の、形付けようもなかった想い全て。 呼応したようにパシャン、と一際大きな音を立てて黒姫が空中に飛び上がる。深い森の上空に浮かぶ真ん丸の月に、その姿が浮かんだ。 「黒姫、気持ちよさそうだな…。」 ぼそりと呟いて、それから良守はその場にすっくと立ち上がった。おもむろに着ていたTシャツと短パンをその場に脱ぎ捨てる。 「おい、良守。」 まさかと思い止めようとする正守の言葉は最後までは言えなかった。想像通り弟は下着一枚になるとザブザブと河に入ってしまう。 「冷たっ!」 「当たり前だろ…。」 いくら夏とはいえ清流の水は冷たい。それが日も差さないこんな時間なら尚更だ。だがその冷たさにもすぐに慣れたのか、良守は腰くらいの深さの所で体を水に浸し潜ってしまった。 「あー、気持ちいい。一度思いっきり泳いでみたかったんだよな。」 数秒水中に潜ってから出てきた良守は、顔を拭うと嬉しそうにそう言った。その満足げな言葉に正守は少し苦い思いで微笑む。 弟の体には無数の傷がある。烏森で負った傷は、治りは早くても傷が残らないわけじゃない。我が身を省みない性分と若さからの未熟さ故の傷とはいえ、痛々しい程のそれに心は軋む。 そしてその傷から、良守は学校の水泳の授業は出ていなかった。体中に残る傷痕は不自然すぎるからだ。墨村の事情を知らない人間から見れば、虐待を疑われても仕方ない。 だから良守がプールや海で泳いだのは、ほんの小さな時、小学校低学年の頃までだろうか。そう言えば殆ど水泳の授業を受けた事がないのに泳げるのだろうか。ちょっと心配になった。 「良守、お前泳げるの?」 「いや、あんまり。でもここ足も着くし大丈夫だろ。」 「冷たい水だと足を攣りやすいんだがな。じゃあそっちの奥の方には行くなよ。底の方だけ流れが速くなってるから足をとられるぞ。」 奥を指差しながら言うと、分かった、と頷いて良守はまた水に顔をつけた。元々運動神経は悪くないから平泳ぎも何とか形になっている。 顔を上げた良守に黒姫が近づいた。それに気付いた良守が手で水を掬うと黒姫にかけている。その楽しそうな様子をぼんやりと見ていると、良守が振り返って兄貴、と正守を呼んだ。 「気持ちいいぞ。兄貴も入れよ。」 無邪気な笑顔だった。純粋に楽しくて誘っただけの年相応の笑顔。だがこいつには自覚が足りない、と正守は思う。 髪から垂れてきた滴を拭う仕草とか、頬や首元を伝う滴とか、月光に浮かび上がる日に焼けていない素肌の艶めかしさとか。目の前にいるのは兄だけど恋人でもある男で。その男の目に自分がどんな風に映っているのか、散々教えたはずなのに未だ自覚が無いのだ。 正守は着ていた浴衣を脱ぎ背後に放り投げると、そのまま酷く粗雑な足捌きで河へと入った。怒っているようにも見える正守に良守が驚き、兄貴、と呼びかけるのも無視して弟に無言で近づく。 そして乱暴な仕草で弟を引き寄せると、その顎を捉え口付ける。兄の突然の行動に良守の目が驚きの為に見開いた。 思わず掴んだ腕を突っ張るように押した良守だったが、その荒々しく激しい口付けにすぐにのまれ抵抗する気力を失う。大きく広い背に腕をまわして自分から兄に体を擦り寄せた。 角度を変え何度も弟の唇を味わっていた正守は、水中に隠れた良守の中心を膝で割り太股で刺激した。唐突に強い痺れが腰を貫き、良守があっと声を上げる。仰け反った弾みで口付けが解かれた。 そのまま現れた喉元に舌を這わせ、耳まで辿る。柔らかな耳朶を口に含めば腕の中の体がぶるりと震えた。 「もうここも反応してる。体が冷えてるからいつもより感じるのかな?」 言いながら勃ち上がりかけた軸を刺激されて、良守は固く瞑っていた目を開けて自分を翻弄する男を見上げる。 「な、んで急に…。」 はあ、と大きく吐息はすでに熱を孕んで艶めいていた。 「前にも言っただろ。俺はいつだってお前を抱きたいんだって。」 目の前で裸になられて我慢できると思ってるの?と含み笑いで耳元で囁けば、良守は肩を震わせてまた目を閉じた。些細な刺激にも敏感な反応を返す弟に笑みを浮かべ、正守は力の入らなくなってきた体を抱え、川岸の岩に腰を降ろす。 その膝に良守を座らせ向かい合わせに抱き締めると、また塞ぐように口付けをした。腰に回していた手を右手だけ前へと動かすと、脇腹から胸元へとなぞりながら移動させる。 「ん、ふぁ!」 すでに固く尖っていた胸の飾りを掌で擦られ、良守の口から堪えきれない声が漏れた。それに驚いて口を手で押さえようとするのを正守が手首を掴んで阻む。 「何で口塞ぐの。誰もいないのに。」 「あ…っ、だって響くから…!」 正守の問いに、良守が恥ずかしそうに俯いて答えた。だだっ広い河原では、確かに声が反響して大きく聞こえる。只でさえ野外という羞恥もあって、良守には耐え難いのかもしれない。 それに、と正守も考えた。ここは裏会の敷地内の河原だ。夜行にもだが、裏会にも人離れした能力の者がたくさん存在する。聴力が飛び抜けている者も、やたらと気配に敏感な者もいるのだ。 万が一にも良守のこの可愛い声をあんな奴らに聞かれでもしたら、自分は何をするか解らない。そのまま正守は自分達の周囲に結界をはった。 「これでいいな。良守、声聞かせてよ。」 お前の可愛い声が聞きたい、と低い声で告げられれば、もう良守に逆らう術はなかった。 正守の思うまま、柔順なまでに愛撫を甘受するようにさせられた体は、与えられる刺激に狂おしい程に反応して声を抑える事など出来ない。 ひとつひとつの愛撫に素直に応える良守に、正守もまた請われ望まれるままにその躰を高ぶらせて。共に頂点に達した後も、何度もお互いを求め合って果てた。 座り込んだ正守に体を委ねきって、良守は荒い呼吸を繰り返している。火照ったというよりまだ熱を発しているかのような体に、水面を通して冷えた風が吹いてきて心地よい。 「昼間、俺が明と話してた時変な顔してたよな。」 突然の正守の言葉に、明って誰だっけ?と良守は考えた。しかし快楽に浮かさればらけた思考は簡単には纏まってくれない。ぼんやりと見上げれば感の良い兄は、ほらサッカーボール蹴ってた子供がいただろ、と教えてくれて良守も思いだした。 そう言えばあの時胸に過ぎったあれは何だったんだろう。チリッとするような、喉の奥に引っかかるような不快感。 考え込んでいると正守が良守の髪をそっと撫でた。河の水と汗を含み、乾ききらずに額に張り付くそれをかき上げられて、その優しい感触にホッと息を付いてから何となく気付いた。 多分羨ましかったんだ、俺は。 明という子供くらいの頃まで、俺はいつも兄の後ばかり付いて歩いていた。幼い俺には留守ばかりの母より、優しいが家事と仕事に忙しい父より、厳格な祖父よりも兄が世界の全てだった。 頭が良くて強くて、近所でも評判なくらいに優秀な兄は弟として自慢で。だから嫌われたくないと必死になるくらいに兄が大好きだった。あの頃までは正守も、普通に頭を撫でてくれていたように思う。ちゃんと言うことを聞いた時とか、自分一人で起きられた朝とか。 その後は複雑な感情を持て余し、ただただ反抗するようになって甘えるという事も無くなって。それからはどんどんと距離が広がって。 ーある朝から兄の姿は無くなってしまった。 あの時俺は死ぬほど後悔した。あんな態度ばかり取って、只でさえ嫌われていたのに更に嫌われたに違いない。どうしてもっと素直になれなかったんだろう。本当は傍にいて欲しいのに。 だが結局はこの手に方印がある限り、遅かれ早かれ兄は出ていったのだろうという結論に達し絶望した俺は結界の中で泣き喚いてー、だけどそれで気持ちを封印したんだった。 今、正守は相変わらず良守の頭を撫で続けている。きっと聡い兄には良守が何を考えているのか、また昼間に何を思ったのかも気付いているのだろう。 でもそれを知ってて、黙って撫でてくれる手がとても心地良いから良守も何も言わない。 見透かされている事はちょっと恥ずかしいけど、あの時言えなかった寂しさを包んでくれるような兄の優しさを知っているから、今は素直に甘えようと思う。 気持ちよくて目を閉じると、急激に眠気が襲ってきた。そう言えば昼寝無しに修行したのに結局3時間しか寝ていない。その上兄と散々抱き合ったのだから限界が来るのは当たり前だ。 辛うじて残る意識の元、後はよろしくと兄に頼めば、微かに笑ったような気配の後、額に柔らかく温かな感触が落ちる。自然と顔を綻ばせて良守は意識を手放した。 「今の顔、写真にでも残しておきたいな。」 時々見せてくれるようになったとろけそうな笑顔を見て、正守が呟きながら弟の体をバスタオルで包み込むと、投げ捨てていた浴衣を羽織り立ち上がる。眠ってしまったならさっさと部屋に戻らなければ、さすがに風邪をひかせてしまうだろう。 腕の中の弟は小柄なせいか、鍛えてある程度筋肉がある引き締まった体の割には軽い。 すっぽりと腕の中に収まるその存在を大切そうに抱え込んで。正守は微笑んだ。 こうしてお前が俺の腕の中で、幸せそうにしていてくれるなら。俺は何だって出来るよ。 この幸せを守るために、お前を愛すために俺は生まれたって、そう思ってるから。 幸せそうに微笑んで言う兄の祈りのような言葉は、眠る良守の耳には届かない。 黒々と輝く水面を、黒姫が大きく跳ねて姿を消した。 前編 |
お詫び企画その5。リクエストは宗さん
リク内容は
夜行お泊まり編。兄からみた、烏森からでて、初めて傍にいるだろうお泊り一日目(in兄貴の部屋内)の会話
もしくは良守を見ている正守
でした
この夜行お泊まりというのは宗さんもいらして下さった正良チャットで出たネタで、私もノリノリで書く気満々でした(笑)
乗り気すぎて長くなった上に、後編がリクされたわけでもないのにR指定って…
いや、言い訳をさせて頂きますと、チャットの時点で河原でHとかそういう方向のネタも出てたんですよ!
(ただあの時は昼間にみんなで水遊びしてて、木陰でコソッとHだったような…?)
書いてる内に夜の水浴びに→夜に水浴びってエロイよね→そりゃまっさんが手を出さないはずがないよね→R
という流れでしたが、むしろ18禁にいかなかったのが不思議です(滅殺)
宗さん、めちゃくちゃお待たせして大変申し訳ありませんでした!!
思いっきり返品可でございますので、取り敢えずお納め下さいませ〜
2007.8.29
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