「血の繋がっていない今のアルとだったら
結婚出来るだろ?」
約束
「ににに兄さん!結婚って…っ!!」
今、たった今長年の想いが通じ合ったばかりの余韻に浸っていた所に、兄から飛び出した爆弾発言
その内容を一呼吸置いて理解した途端、かーっと全身真っ赤になっただろう事が自分でも分かった
「そう、結婚。男同士じゃないし、血も繋がってないから問題ないだろ?」
平然とした顔で話す兄。それはそうなんだけど・・・
「だってそんな急に言われても・・・」
当然と言えば当然だが、想いを伝えるつもりがなかったので、まさか兄と結婚話が出るなんて考えてもいなかった
それだけに戸惑いが大きい
「アルは嫌なのか?」
少し寂しそうに顔を覗き込みながら話す兄。そんな顔をしてそんな事を言うのは卑怯だと思う。抱き締めたくなるじゃないか
「・・・嫌な訳じゃないよ。急な展開でビックリしてるだけ。でも本当に本気なの?僕で良いの」
「アルじゃないと俺は嫌だ。他の誰もいらないから、一生傍にいてくれ」
あまりにもキッパリと迷いもなく告げられた言葉に、反論の余地はなかった
その想いは自分も同じだったから
だから自分から腕を伸ばして兄の首筋にしがみついた
「うん。僕を一生兄さんの傍にいさせて下さい。」
耳元で囁くと、背にまわされていた兄の手に少しだけ力がこもり、身を離すように促される。
きっと赤くなっているだろう顔で兄さんを見詰めると、頬に手を添えられ軽くキスをされた。
嬉しい、本当に嬉しいよ、兄さん。でも、
「でも僕まだ15歳なんだけど」
この国では女性が結婚出来るのは16歳からだ
「そうなんだよな。だから取り合えず婚約しといて、アルが16歳になったらすぐ結婚しよう」
お互い両親はいないし、結婚しても住むのはこの家だし、あまり変わり映えはしないけど
「ウィンリィに報告しないとね」
うわーなんだか凄く恥ずかしいな。他の誰に言うは平気だけど
「…報告、か。なあ、アル」
「なあに?」
「結婚式にロイの野郎とリザさんと軍の連中を呼ぼうか」
兄の言葉に一瞬ビックリする。それは来て欲しいけど
「僕の事話して信じてもらえるかな」
「信じるだろ。話だけならともかく、お前自身に会えば嫌でも解るさ」
ちょっとだけ悪戯っぽく笑う兄を見て、僕にも悪戯心が浮かんだ
「良いね。きっとビックリするよ」
「ああ、ヤツがどんな顔をするのか楽しみだ」
「でも、今大佐が大総統なんだよね?きっと忙しいよ。それに大総統をロイの野郎、なんて言っちゃ駄目じゃない」
「いいんだよ、大総統になろうが無能は無能だ」
「もう、兄さんったら。兄さんくらいだろうね、ロイさんをそんな風に言える人なんて」
呆れたように言う。でもそう言える程、彼が兄さんにとって身近な存在という事なんだろう
きっと僕がいなくなった後、ロイさんやリザさんは兄を大切にしてくれたんだと思う
「落ち着いたら、報告がてら招待状を持って会いに行こう。あいつらには色々心配かけたからさ」
「そうだね。一杯一杯迷惑とかかけちゃったよね」
「だからさ、アル」
「もう心配しなくても平気だって分かってもらえるように。俺達幸せになろうな」
「・・・もう充分すぎるぐらい幸せだけどね」
そう言うとぐっと顔を引き寄せられる。鼻先が触れそうになった時、兄さんが微笑んだ
それがあんまりにも幸せそうで、見詰める兄さんの瞳が僕を愛おしそうに見るのが嬉しくて
全身から幸せがこぼれ落ちてきそうなのが怖いくらいで
そのまま誓いのキスのような数回の触れ合うだけの口付けを交わした
誰よりも、誰よりも
ずっと見守ってくれていた人達に
心配をかけたけど、迷惑をかけたけど
安心してもらえるように、伝えるために会いに行こう
二人は今、こんなにも幸せですと