青天の霹靂

















ソファに腰掛けた兄の、熱心に本を読む後ろ姿が見える

広い肩、髪をポニーテールにしているので、首筋に後れ毛が垂れているのもよく見えた



綺麗な人なんだよな、黙ってればの話なんだけど

背の伸びた兄は鍛錬しているだけあって、体がとても引き締まっている

手足はスラリと伸び、でも逞しい

顔立ちも整っていて、金色の目がそれを一層際だたせていた

目立つのだ。その存在感から何まで圧倒的な程に



そんな兄を独り占めしている僕

ある意味とても贅沢かも



徐に兄の正面のソファに腰掛けた

そのままじっと兄を凝視する



本に集中している兄は、多少の視線には気付かない

その真剣な表情も好きなんだけど、何だか今は僕を見て欲しかった

だから足早に近づいて兄さんの頬を両手で挟み込み、無理矢理上を向かせてみた



「アル?どうしたんだよ、何か用事か?」

「用事と言えば用事かもね。まるっきり僕の勝手な用事だけど」

「何だよ、ハッキリ言えよ」

「うーん、言うというか…、する、かな?」

そのまま顔を近づけて、さっさと兄にキスをした

兄の手から本がボトリと落ちる



顔を離すと兄の顔が真っ赤になっていた



「アアアアアルフォンスさん?一体どうしたんだ急に!」

「…何で今更キスくらいでそんな真っ赤になるのさ」

「キスくらいって、キスくらいって!お前からしてくれるなんて滅多にないだろ!」

焦るの当然!!と握り拳で力説する兄を見て、そうだったっけ何て考える

言われてみるとそうだったかも。でもそれってさ



「僕からキスしようと思うより前に、兄さんがしょっちゅうキスしてくるからだろ」

「…って事は何か。俺からキスするのを控えたら、アルからキスしてくれるって事か?」

それも良いけど、でもキスしたいのを我慢するのもな〜、なんてブツブツ言い出す兄

ああもう、そんなの今はどうだって良いんだよ兄さん



「五月蝿い。良いから今日は黙って襲われてろ」

本当は兄さんって格好いいよな〜、とか思っていたらキスしたくなって

さらに言うと、もっと別な事もしたくなった訳で



真っ昼間から何やってんだって、頭の片隅で思わないでもないけど

でもまぁ、たまには良いでしょ?何て誰ともなしに言ってみる



頬を挟み込み、無理矢理こちらに向かせた兄さんの顔

いつもは鋭いくらいに整った顔が、今は驚きの為か目が見開いて丸くなってる

あ、可愛い。こういう表情すると、思い掛けず幼くなるんだよね



何だか楽しくなってきた。自分で言うのもなんだけどノリノリだ



僕は片膝をソファに乗り上げ、兄に覆い被さるようにもう一度キスをする

そのまま兄の羽織っていたカーディガンを肩から落とした

シャツの釦を外してそっと手を差し込むと、ピクリと反応する

その時兄の手が僕の腰に廻った



長めのキスを終えて顔を離すと、兄の目がとろりと溶けていた

普段はあんまり見ない表情。どうしよう、凄く可愛い



「どうしたんだよ、アル。今日はえらく積極的なんだな」

「変かな?僕にだってたまにはこういう日があるんだよ」

なんて事無い平和な昼下がりの休日。幸せを満喫しながら

大好きな人と触れ合いたいなとか、キスしたいなとか、…欲しいな、とか

僕にだって、そういう時もあるんだよ



「こういう僕は嫌?」

僕の台詞に、兄は大真面目な顔で首を振って答える



「とんでもない。大歓迎です」








その日、夕食を二人して食べ損ね

気付くと休日は終わっていたけど


でもいつもより充実して幸せ。そんな甘い一日のお話




























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