教えてあげるよ。ボクがどれだけ兄さんを好きなのか。








熱帯夜













ソファで本を読んでいると、いきなり顎を捕まれた。
そのまま上を向かせられて見えたのは、楽しそうな兄の顔。
逆さまの角度のキスをされて、仰け反った首に這ってくる長い指。
それを甘んじて受け止める。
何度も角度を変えながら繰り返されるキスに、どちらともなく甘い吐息が合間に漏れる。



「…唐突だねぇ。」

やっと解放されて、多分ちょっと潤んだ目で兄を見上げた。

「ほんのさっきまでそんな気もなかったんだけどな。アルを見てたら急にしたくなった。」

言いながら前にまわって来た兄が、シャツの中に手を差し込んでくる。
相変わらずヤルとなったら行動が早い。色んな意味で。

まあ真っ昼間の行動にしてはちょっとアレだが、ボクだって別に拒もうとは思わない。
でも場所が問題だ。



「ストーップ!兄さん、場所を変えようよ。」
「何で、ここでいいじゃん。」
「ボクは嫌だよ、ここじゃ落ち着かない。」

だって狭いし身動き一つにも気を使いそうだ。集中出来ないよ。
そう思っただけだったのだけど、兄さんは急に変な顔になった。



「アルはさー、俺とこういう事すんの嫌だったりはしないか?」
「は?何でそんな事言うの。ボクが嫌がってるように見える?」
「嫌がってるようには見えないけど。それなら流石に俺だって気付けばやめるさ。
 そうじゃなくて、いつも仕掛けるの俺の方だし渋々付き合ってるんじゃないかって…。」

兄の言葉に正直ビックリだ。いつも強気なんてもんじゃないくせに。
しかも渋々付き合ってるだって。ボクがそんな大人しい性格だと思ってるんだろうか。



「嫌だなんて思った事無いよ。そう思ったらボクちゃんと言うよ?
 ボクから仕掛けないのは、兄さんがしてくる今のペースでちょうど満足してるからってだけでさ。」

そういうタイミングが合っているのだろう。兄さんがしたい時がボクのしたい時期。
だから今まで拒んだ事は一度もない。
ああでも、もしかしたらそうじゃない時でも拒んだりはしないかも。
兄さんに触れられたら、ボクはすぐに溶けてしまうのだから。


でも少し反省した。兄さんにそんな風に思われてたなんて。
確かにボクから誘ったりとかしてなかったし、もう少し積極的にしてもいいかも知れない。
欲しいと思っているのは、兄さんだけではないのだから。



「だったら。」

立ち上がって、目の前の兄にキスをした。軽く触れるだけの可愛らしいキス。

「今日は兄さんに分からせて上げるよ。ボクが渋々付き合ってるわけじゃない事を。」

そう言って兄ににっこりと微笑んだ。












キスは好き。頬や髪に落ちてくる触れるだけのキスも、そうじゃない情熱的なキスも。
優しいキスは落ち着いてやすらげる。恋人のキスは心が騒ぐ。


先を急ぐかのように角度を変えて何度もキスをした。絡み合う舌の甘さに思考に霞が掛かる。
お互いの服を破るような勢いで剥ぎ取ると、ベッドの上で投げ出して座る兄の足の上に跨った。



「あっ。」

背筋を這っていた兄の手が、悪戯に首筋から胸の辺りに動いたと思うとそこにある突起をはじいた。
思わず声が出てしまって焦る。このままだといつもと同じになってしまう。
だからボクは兄の手腕を掴んで引き剥がした。



「アル?」

不思議そうな兄さんの手を引き寄せると、その手の平にキスをひとつ落とす。

「駄目だったら、今日はボクがするの。」

そう宣言して、今度は唇に軽くキスをする。そのまま手で兄の体をなぞった。
首筋から胸元へ。引き締まった体はとても綺麗で魅力的だ。
残ってしまったたくさんの傷さえ、愛しくてたまらない。
取り戻した右腕部分の傷、戦いの時についた傷、それらひとつひとつに口付ける。
大きな傷は癒すように舐めてみる。すると兄がピクリと反応するのが分かった。
それと同時に顕著な反応を示し始めた部分を、やんわりと手で握りこんでみる。



「ア、アルっ!?」

慌てたような声を上げる兄を無視して握った手に少しだけ力を込めると、微かな呻声が聞こえた。
それに気を良くして、少しずつその手を上下に動かしてみる。



今までこういった事を兄にしたことはなかった。
それは別に嫌がっていた訳でも出し惜しみしていた訳でもなく、単に兄に翻弄されていたからなのだが。
よく考えてみると、ちょっと勿体ない気がする。


いつもとは違う兄の表情。零れる溜息も声も何だか色っぽく思える。
そのことに背筋に何かが這い上がるのを感じた。
こんな風に違う兄を今まで知らなかったなんて。うん、やっぱり勿体ないかも。
内から湧き出る衝動のままに、先走りでぬるりとした感触に変わったそれに口付けてみる。



「う、アッ!」

そのまま口内に導くと、兄の口からはっきりとした喘ぎ声が漏れた。それがとても嬉しい。
もっと声が聞きたくて、含んだまま先端を軽く突いて舐め上げてみる。その度に兄の口からくもぐった声が漏れた。
完全に立ち上がった兄自身を緩く掴んですりあげたり、形を確かめるように舌で舐めたり。
時には口腔全体で包み込むように含んで動いてみたり。そうする度に、兄の体がビクビクと反応する。



「アル、もう放せ…っ!」

呼ばれて気付くと、シーツを握る兄の手が先ほどよりも力が籠もっているように見えた。そろそろ限界みたいだ。
溢れる蜜を舐め上げながら先端を含んで強く吸い上げると、兄の手がボクを引き剥がそうとしてきて。
それを拒んでいたのだけど、強く捕まえられて顔が僅かに逸れてしまった。
その時限界を迎えた兄が熱いものを解き放ち、ボクの顔に降り注いだ。



「…飲もうと思ってたのに。」

「飲まなくていい。ってか舐めるなよ。」

顔についた迸りを手で掬って舐めていたら、兄が変な顔になった。ブランケットで拭こうとするのを手で制す。
照れも入っているようだけど、どうして嫌がるんだろう。



「兄さんだってしてくれるし、飲んでるじゃない。別にいいでしょ。」

そう言ったら、さらに兄が変な顔というか複雑な顔になった。



「だって凄すぎ…。」

「え、何が。」

「何て言うかさ、今まで見た事なかっただけに視覚的にエロすぎるっていうか。興奮しすぎておかしくなりそう。」

「何だ、そんな事。」

「そんな事ってお前な。」

「だって興奮すれば良いじゃない。セックスしてて興奮しない方が嫌だよ。それに…。」

言いながら兄の首筋に腕を回して抱き付いて、その耳元で囁く。



「まだこれで終わったわけじゃないんだから、もっと興奮して。」

見る見るうちに赤く染まっていく耳たぶを、そっと嬲って甘噛してみた。
こういう反応って良いな。凄く可愛い。


一度体を離して、胸まで垂れた兄の精液を手で拭う。これを使っても良いけど、乾きやすいんだよね。
なのでベッドサイドの引き出しの中から潤滑剤を取り、手の平に中身を押し出した。
ぬるりとしたそのジェル状の物を、これから兄を受け入れる場所へと塗りつける。



「…ん。」

本来そういう用途で使うわけでない場所は、どうしたって準備は要る。
でも今日はそれすらもどかしいくらいに、兄さんが欲しくなっていた。
これってあれかな、口でした事で興奮したとか。口の中も性感帯だし、不思議な事ではないよね。
そんな事を考えていたら、急に兄に腕を引かれた。倒れ込むように座る兄の上にのし掛かる。
そのままキスをされて、頭の芯が溶ろけそうになった。体の中の疼きは、無視出来ない程になっている。
準備万端とはいかないけど、もう我慢が出来そうにもなくて。
ボクはその支えもいらない程に起立したものに手を添え、自分から腰を下ろしていった。



「…ぁっ。」

入り口を少し過ぎた辺りで、ピリリとした痛みを感じる。
それでも慣れた体は、馴染んだ潤滑剤の力を借りて解きほぐれていく。
ゆっくりと息を吐きながら身の内に全てを収めて、ボクは少し荒い息を吐いた。



「アル、大丈夫か?」

心配そうな兄の顔。その額に軽くキスをした。

「大丈夫だよ兄さん。…動くね。」

小さな衝撃が過ぎ去ると、残るのは自分の中に感じる兄の鼓動と熱。そのふたつに疼きが戻ってくる。
それをもっと感じたくて、自然と揺れるままに腰を動かした。



「は、ああ!兄さ…、はぁ…っっ!」

ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が室内に響き始める。動く度に溢れてくる兄の先走りと潤滑剤。

「アル、アルフォンス…!」

「あ、はぁ!兄さん、ボクっ。」

焦れていたのか、思ったよりも熱の駆け上がるのが早い。ともすれば頽れそうになる体を兄の手が支えている。

「っ…あぁ、ーーっあん!」

自重によりいつもよりも深い結合、下からも突き上げられる快感。
支えているはずの兄の手は、時々弱い太股から腰のラインを撫で上げて、それだけでも達してしまいそう。

「ひぁ、あ…っあっ、んぅ!」

最奥まで飲み込んだ兄の楔に内壁を擦られる快楽に、アルフォンスの腰の動きも激しくなる。
その心地よい締め付けに、エドワードの咽が鳴った。

「やぁ…、ボク、ああ!兄さん、もぉ…っ。」

「…っ、アルフォンス…!!」

瞬間、強く締め付けられてエドワードが柔らかな粘膜に熱い迸りを叩き付ける。
身の内を焼き尽くすような熱に震えながら、アルフォンスも声にならない声を上げて達した。











力を失い倒れ込んできた愛しい体を抱き留めて、エドワードはその背を撫でていた。
荒い呼吸をしながら目を瞑っている弟。真っ赤に染まった頬、その頬に伝い流れている汗。
息をする為に薄く開いた唇はぷっくりと赤くなっている。
弟の姿は全て、どんな媚薬よりも簡単に俺を煽る。何度抱いても際限がないくらいに。
穏やかに眠る姿にも、守りたいと思う気持ちと同時に湧き上がるのは浅ましいくらいの欲望。
この優しい顔が、快楽に染まる姿を見たい。涙に濡れるところが見たい。
相反する想いは矛盾する事無く胸の中にある。これも男の性というものか。



少しずつ治まってきた呼吸を見計らって、エドワードはアルフォンスの体を横たえた。
繋がったままでの動きに、アルフォンスから僅かな吐息が漏れる。



「兄さん…?」

未だ快楽の余韻を残した瞳で見上げてくる弟に、エドワードは微笑んだ。

「アルに気持ちよくしてもらったから、今度は俺の番な。」

「え、あああぁ!!」

言葉と同時に突き上げると、衝撃にアルフォンスの口から高い喘ぎ声が上がった。



「駄目ぇ…っ、んっあ、兄さん…!」

先ほどの余韻でひくつく粘膜に小刻みに刺激を与えると、アルフォンスの目から涙がポロポロと零れ落ちた。
それを舐め取りながらも動きは止めず、今度はもっとも感じる場所を責める。



「兄さ、ああ…っ!いやあ、そこ…っ!」

「嫌じゃないだろアル?こんなにひくついて締め付けてくるのに。」

「ひ…っ!?やっ、はああ…っ!」

今まで一度も触れていなかったアルフォンス自身に手を伸ばして刷り上げる。
するとアルフォンスが感じたその快楽を、ダイレクトに内壁が伝えた。
その反応の良さに嬉しくなりつつ、強い締め付けにすぐに達してしまいそうになる。



「ふぁ、…あ…あぁ…っ、…んっ。」

思うままに従順な体を揺さぶると、アルフォンスの口から甘い喘ぎ声が絶え間なく溢れてくる。
普段の声も甘く可愛らしいけど、こんな時のアルフォンスの声はそれだけでも達しそうな程に甘くて堪らない。
俺だけが知っているアルフォンス。もっともっと、その声を聞かせて欲しい。俺を欲して呼んで欲しい。
想いに突き動かされるままに、絡み付いてくる粘膜を猛ったもので突き上げた。



「あっ…んっ…、もぉ…兄さん…っ!」

最奥に感じる兄の熱。それに絶え間なく刺激される快感。全てが泣きじゃくりたい程の悦楽だった。
その存在で全てを埋め尽くして欲しい。隙間無く、他に何も入る余地が無いほどに。
本当はその身の内に溶けてしまいたい。ひとつになってしまえたら良いのに。
でもボクらは人間だから、それは出来なくて。
何度体を繋げても、こうして熱を分かち合っても。それを過ぎたら個々に戻ってしまう。
ならばこの瞬間だけでも、それを忘れて。僕たちは今ひとつなんだと錯覚していたい。
この身を灼ききるような貴方の熱だけを感じていたい。



「ーーあ、ひぁ…っん!兄さん、にいさ…っ!」

白く滑らかな肌が淡い紅色に染まる姿は、何とも言えずに扇情的で。
甘く自分を呼ぶ声に煽られて動きはどんどん早くなる。
その度にアルフォンスの口から漏れる喘ぎは意味を無くしていって、零れる涙が痛々しい程だ。
でもそれすら体の奥の疼きを強くする。



「はぁ…っ!んっ、もぉ駄…目っ…!!」

アルフォンスの目は焦点をなくし、太股が細かく痙攣している。
限界を感じ取ったエドワードは、お互いを絶頂へと導く為にその動きを早めた。



「あっあっ、兄さん…っ!ーーーーーーーっ!!」



泣きながら昇り詰めたアルフォンスの激しい収縮に、エドワードもその内に己を解き放った。

















お互いを貪った後の気怠さの中、閉じそうになる瞼を必死に堪えながらアルフォンスが囁く。



「もう、ボクが渋々付き合ってるなんて思わない…?」

「思わないよ、俺、アルに愛されてて嬉しい。」

「…ん、それなら良いよ。愛してるからね、兄さん…。」

そのまま意識を失うように眠ってしまった弟の額にキスをした。
アルフォンスの存在は、こんなにも俺を幸せにしてくれる。

全てが一人を中心に動く世界。失ったらその瞬間にも終わる世界。
それは人の目から見たら、滑稽にすら映るものかもしれない。

それでも構わないのだ。他人にどう思われようとも、アルフォンスがこうして隣にいてくれるならば。
こうして俺の腕の中で身を委ねて、安心して眠ってくれるのならば。



世界を敵に回したって構わないのだから。






「愛している、アルフォンス。」



胸の中に温かく満たされていくものを感じながら、エドワードも幸せな眠りについた。






























サイト1周年企画その九 リクエストは某匿名希望氏

リク内容は
・すごいエロ!
でした(笑)

どちらが上がイイですか?とお聞きした所

・どっちが上かは書きやすい方でいいけど、フェラと顔射はありの方向で
・顔がだめなら中出しより外出し
って事だったので、フェラと顔射を書いてみました。
なのでラストは中出しで。フルコースって事で。(最低ですか)

苦手な18禁でしたが、結構頑張りましたよ!書き出したら楽しかったですよ!
これが初めてまともに書いたやおいです。暫くは書きません;
大好き尊敬している某匿名希望氏に、少しでも喜んで頂けると嬉しいんですけど…。
○○さん、リクに「すごいエロ!」と発想する貴女が大好きです!!
どうぞお受け取り下さいませ〜v





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