僕が鎧の体を持っていたあの頃は、気付かなかった想い

いつのまにか変わっていた好きの種類の違い

家族としての「愛してる」と今の「愛してる」

でも今の僕は知っている

今もこの心を温かくしてくれる貴方への想いが、どんな種類のものかなんて















恋・愛−こい・あい−

















好き、大好き、愛してる

言葉にするのは簡単だけど、想いの全ては伝え切れない

どんなに懸命に伝えようとしたって、言葉だけでは表現しきれない

だから僕は貴方に触れる

だから僕は貴方にキスをする



僕から触れると兄さんは嬉しそうに笑うから

キスをすると優しく抱き締めてくれるから

触れた箇所から伝わる温もりが、互いの想いを伝えてくれるから

だから僕達はいつも触れ合う



幸せだなって思うよ

ひとつひとつの何気ない日常が、こんなにも愛おしい

貴方と一緒に穏やかに暮らせる毎日が、何よりも大切





朝、目が覚めると、一番最初に目に入るのは大好きな兄さんの顔

朝食は兄さんの好きなオムレツを作る事が多い

雨が降ると家の中で本を読んで過ごして、晴れると庭で日向ぼっこしたりして

たまに街に買い出しに出掛けたり、時々は懐かしい人達の顔を見に行ったり

夕食は時々ばっちゃんちで食べたりもする。ばっちゃんとウィンリィが食べに来る事もある

お風呂から上がると、兄さんが僕の髪を拭いてくる。僕も兄さんの髪を拭く

大好きな兄さんの大好きな綺麗な髪。それに触れている時の心地よさったらない

一緒に眠るベッドはちょっと大きめにした。兄さん時々寝相が悪いから

そんな風に僕達の日々は過ぎていく





でも時々、本当に時々なんだけど

胸の奥に小さな不安が宿る時がある



今の幸せは夢じゃないのかって。幻じゃないのかって

本当の僕はまだ鎧のままで、これは全て幸せな夢を見てるんじゃないだろうか

触れる感触も伝わる温もりも、リアルな幻想なんじゃないだろうか

確かに現実を僕は取り戻した体で生きているのに、それすら不安になるなんて



幸せすぎて恐いって、こんな事を言うんだろうか

幸せだからこそ、こんな不安を抱えてしまうんだろうか

この幸せを、貴方を失う事が恐くて怯えてしまう僕がいる





そんな風に怯える僕を、兄さんは黙って抱き締めてくれる

僕の不安をすぐに感じ取り、ただ傍に居てくれる

何も言わないのに、どうして兄さんには分かっちゃうのかな





大好きだよ、兄さん

世界中の誰よりも、僕が兄さんを愛してる

僕の中で当たり前のように育った想い。少しずつ形を変えた想い

それはずっと貴方にだけ向かっていた

もうとっくに僕の中から溢れ出してこぼれ落ちてる、好きと愛してるの気持ち

これからも、貴方だけに向かっていく



ねえ、僕にすらコントロール出来ないこの想い

きっと全てを受け止めてね

そう出来るのは兄さんだけしかいないんだから

僕も貴方の想い、全て受け止めるからね









大好きだよ、兄さん。愛してる




僕を好きになってくれて、ありがとう






















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