情懐














力を失い、ベッドへと沈んでいく体

目を瞑って荒い息を吐くアルフィーネの顔にかかった髪を梳く



「大丈夫か…?」

そう声を掛けると、ゆっくりと開いた瞳が少しだけ恨めしそうに見上げてきた

何か言いたそうに僅かに口が開く。だが、言葉を発する事はなかった


その様子で今のアルの状態が分かったエドワードは、サイドテーブルの水差しから

水を口に含むと、アルフィーネに覆い被さった

そのまま口移しで水を飲ませる

コクリと音がして水を飲み込むと、アルは気が抜けたような溜め息をついた



「大丈夫…じゃない」

散々啼かされて喘がされて、掠れてしまった声で恨めしそうに言ってみる

それを聞いたエドワードは、涙目で自分を見上げるアルフィーネの頬に軽く口付けをした



「アルが俺の事気にしてくれてたのが分かって嬉しくて。ついタガが外れちまった」

でもそれも許してくれるんだよな?なんて嬉しそうに言うから反論出来なくなる



確かに、兄さんに遠慮なんてして欲しくなかった

思うとおりに僕を抱いて欲しいと望んでいた



それをセントラルでみんなと飲んで酔っぱらったあの時

僕は兄さんに言ってしまった・・・らしい


今満足しているのかとか、もっと兄さんが欲しいとか

そんな事まで言ってしまった・・・ようなのだ



実はその辺りの記憶が曖昧になっている

ぼんやりとは覚えているのだけど、どうもハッキリとしない



それでも酔った勢いで兄さんに詰め寄った事は朧気ながら覚えているし

何より今まで悩んでいたけど、なかなか本人にも言えずにいた事を兄さんが知っているわけだし



どう考えても、僕が全部言っちゃったんだよね



その事を考えると、とても恥ずかしくて居たたまれない気分になる

酔っていたとはいえ、以前から思っていた事とはいえ、なんて事を言っちゃったんだろう



だけど、兄さんの幸せそうな顔を見ていると、混乱した気持ちも少しだけ薄れてきた



兄さんを欲しいと望む事は、自分をもっと欲しがってと望む事は、恥ずかしい事なんかじゃないから

触れて欲しいと思う事は、当たり前の事なんだから



愛しているのなら





でも、でもでもでもっ!

いきなりあんな色々しなくても良いんじゃないかと思うんだけどっ!!


先程まで兄にされていた事、させれらた事を思い出してしまい、真っ赤になる

それを兄に見られないように、動きの鈍い体を叱咤して俯せになった


嫌だったわけではない。もちろん嬉しいのだけれど

兄がどんなに僕を望んでくれているか、今まで以上に感じられて

でも恥ずかしいと思う気持ちもあるのだ


人の心って単純で複雑…



思わず小さく溜め息をつくと、兄が僕の髪を梳いてくれる。そして背中に口付けした

その温かな感触に、僅かに体が震える



「アル、ごめんな。やっぱり辛かったよな」

先程まで嬉しそうだったのに、僕がぐったりしていたせいだろうか

申し訳なさそうな兄の声に、顔を少しだけ上げてみる

そして心配そうに僕を見る兄さんを見上げた



「…嫌だったわけではないからね?また加減しようなんて思わないでよ、兄さん」

釘を刺すように言ってみると、兄は僅かに苦笑した



そんなの駄目なんだから。だって貴方を望んでいるのは僕だって同じ

欲しいと思っているのは僕の方なんだよ



伸ばした手を力強い兄の手が捕まえて掴んでくれた

その温かさにホッとする

こんな気持ち、兄さんだけなんだ。心地よい安らぎも湧き上がる体の熱も

たった一人兄さんだけが、僕の感情を左右する

僕の世界は貴方を中心に動く

だからお願い。ずっと僕の手を離さないで

いつだって僕に触れていて



一生懸命着いていくから。貴方の隣を、遅れないように










腕を取ったままゆっくりとエドワードがアルフィーネに覆い被さり、その体をそっと抱き締めた


その優しい抱擁が嬉しくて、大きな背中に腕を廻して抱き締め返す




そのまま暫く動かずに、お互いの温もりを感じていた






















Back