この心の奥底に潜む醜い感情
貴方はそれをまだ知らない
情炎
貴方はいつも「アルは優しいから」と言う
本当は違うのに。僕は優しくなんかない
貴方はいつも、まるでとても綺麗なものを見るかのように僕を見る
本当に違うんだ。僕は貴方が思うような綺麗な存在じゃない
貴方は本当の僕を知らない。僕も知らせていない
知られた時に嫌われてしまうんじゃないかと、軽蔑されてしまうんじゃないかと
それが恐くて必死に隠していた
僕は優しくなんかない。いつも貴方の周りにいる人達に嫉妬している
兄の傍にいるのは自分だと、他の誰にも近寄らないで欲しいと
ただ何気なく肩に触れたり、話をしたり
そんな当たり前の事にさえ、嫉妬している
僕は綺麗な人間じゃない。こんなに醜い感情をたくさん抱えている
どうして二人だけでいられないんだろう。他の何もいらないのに
兄さんがいてくれたら、それだけで充分なのに
外の世界なんていらない。二人だけで生きていられたら
他の人なんて見ないで。僕だけを見ていて。僕の存在だけを感じていて
誰も僕達に声をかけないで。僕達を放っておいてよ
こんな僕を貴方は知らない
でもそれもいつまで持つんだろう
いつまでこの感情を隠しておけるのだろう
こんなにもこの胸から溢れだしてしまいそうなのに
昔はこうじゃなかった。もっと純粋に貴方を愛していた
子供の頃はただ愛しいと、それだけの想いでいられたのに
もう、それだけじゃいられない。もうそれだけじゃ足りないんだ
貴方の全てが欲しい。その想いも魂も存在の全てが欲しい
他の何も見ないで。僕だけを見ていて欲しい
それを望む事は許されない事なのかも知れないけど
いつからか貴方への想いが僕の中で一杯になって
いつのまにか溢れ零れていく
ただ愛おしんでいられた優しい時間は過ぎ去って
貴方の全てを望む僕がいる
僕はもしかしたら、もうすでに狂っているのかも知れない
貴方を愛しすぎて、貴方の事しか考えられなくなって
気付いた時には狂っていくのかも知れない
優しい僕じゃなくてごめん。綺麗な僕じゃなくてごめん
兄さんが望む僕でいられなくてごめんね
でもこれが僕なんだ。偽らざる僕という存在なんだ
ねえ、兄さん。貴方はこんな僕を受け入れてくれる?
もし、貴方が受け入れられなくても
僕は貴方を手放すつもりは無いけれど
貴方を愛して僕は強くなった。貴方の為なら何だって出来る
貴方を愛して僕は弱くなった。貴方の言動ひとつで僕は根本から揺らぐ
貴方という存在が、僕の全てを支配する