いつものようにベッドで抱き合い、いつものようにキスを交わす

当たり前のように馴染んだ体温と、繰り返されてきた行為

そのはずだったのに






合法ドラッグ











「んんっ!」

深くなった口付けの最中、兄の熱い舌と共に入り込んできた物

微かな苦味を感じて、僕は反射的にそれを拒もうとした

でも顎を掴んだ兄の手が、口付けを解く事を許してくれなくて

唾液と共に喉の奥へと差し込まれるそれを、僕は息苦しさの中で嚥下した

そのまま兄の胸を叩くと、やっと腕を放して解放される



「…兄さん!今なにを飲ませたのさっ!!」

涙目になりながら訴えても、兄は平然としている。ああ憎たらしい



「何って言うかなー。所謂媚薬ってヤツ?」

「は?」

聞いてるのはこっちなんだから、疑問符をつけるなよ。って言うか媚薬って…



「昼にもらったんだけどさ。何でも持続力上がってビンビンになるらしいぞ」

「な…っ!何そんな怪しげなもの人に飲ませてるの!」

「怪しくないぞ、一応合法らしいし」

「合法とかの問題じゃないだろ!」

どうしてこの兄は、常識からこうもはみ出した所があるかな

合法だろうが、人体に悪影響が無かろうが、断りも無しに人にこんな物飲ませる事自体が

間違っているんだと何故解らないんだ



頭を抱える僕の肩に手を置いて兄が言った言葉に、僕は更に打ちのめされた

「大丈夫だって。さっき俺も飲んだから」

「・・・・・・・・・ハイ?」

「アルに飲ませるのに何かあったら大変だし、それにやっぱり面白そうだしな」

こんな事を話してるのに、兄の表情はいっそ無邪気といってもいい感じだった

好奇心旺盛な子供の顔というか



「最初はさ、俺だけ飲もうかと思ったんだよ。これって攻める側が飲むもんだろ?
 だけど俺だけ何時間も元気でもさ、それに付き合わせたらアルにも悪いし。
 だったら二人して飲めば、お互い際限なく朝まで楽しめそうだなって」


何時間でも、際限なく、朝までだって…?


兄の脳天気な台詞に頭がくらりとする。今初めて飲まされた薬の恐ろしさを知った気がする

そんなに凄い薬なの、あれって…



「なんで、こんなもの…。大体媚薬なんて飲まなくたって普段から元気じゃないか」

「でもさ、そういうのとは別物の快感らしいんだよな」

そんな風に言われたら興味が湧くだろ?

なんて言う兄の姿に、この自体の元凶の人物に思い当たる



「もしかしてこれくれたのって」

「うん、無能」

この二人いつも喧嘩ばっかりなのに、何でこういう事でだけ意気投合するかな

ロイさん、次会った時には覚悟していて下さいね

そんなアルフォンスの心中も知らず、エドワードは嬉しそうに弟の頬にキスをする



「効果が一番出るのが飲んで1時間くらいらしいから、それまではゆっくりいこうな」

妙に生き生きとした兄の様子に、内心溜め息をつくアルフォンス



まあ、飲んでしまったものは仕方ないし。だったら開き直って付き合うしかない

そうやって何だかんだで兄のとんでもない言動を許してしまう


僕って兄さんに甘いよな…

でもそれも惚れた弱みというものだろうか






複雑な気分になりながら、下りてきた兄の唇を受け止めて、その舌を自らの口内へと誘い込んだ

今夜はいつもより積極的にしてみようか。薬を言い訳に出来るし、なんて考えながら



















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