※アルの独り言ですが、リヒ(死人)に対して酷いです
 タイトルそのままの独白(むしろ毒吐く)だと言う事をご了承の上、お読み下さいませ

※さらに兄さん寂しさに負けてリヒと出来ちゃってます。激注意!!(アルエド大前提)




















兄が寝静まったのを確認して、彼は部屋をそっと抜け出した。

迷うことなく向うのは街の外れにある教会。

そこにいる「彼」にもう一度会う為、ーアルフォンスは足を速めた。






誰よりも近いから、誰よりも嫌悪する













街灯も乏しい道だったが、幸い今夜は月夜。道を明るく照らしてくれていた。

昼にも一度だけ来た教会はとても小さく、だけど心が落ち着くような穏やかさに満ちている。

遅い仕事の後でも別れを惜しみに入れるよう、遺体を安置している礼拝堂は鍵がかけられないのをアルフォンスは知っていた。

葬儀自体は明日行われる。「内乱によって不運にも命を落とした」ということになった彼の名は。


「こんばんは、アルフォンス・ハイデリヒ。…もう一人のボク。」

葬儀は明日だというのに、彼の周りには花が溢れていた。その突然の死を惜しむ人々が捧げた白い花。

それだけでも彼がどれだけの人に慕われ、愛されていたのかがわかる。


「あなたがずっと、兄さんを支えていてくれたんだよね。」

誰も知る人のない異世界に飛ばされて。父さんはいたけど、暫く後に姿を消したらしいし。

帰る道も見つけられず、絶望に押しつぶされていく日々。それはどんなに恐ろしい孤独だったろう。

兄さんのいない恐怖ならボクも味わった。それでもボクの周りにはたくさんの優しい人達がいた。

だけど、兄さんにはいなかったんだ。たった、一人を除いては。

アルフォンスはそっと物言わぬ人の頬に手を伸ばした。

その想像もつかない程の氷のような感触に、一瞬ピクリと指先が震えたがそのまま触れる。

眠っているかのように穏やかな表情を浮かべたその人の肌は、冷たいけれど手に馴染んだ。

まるで自分の頬に触れているかのように違和感がない。


「ねえ、兄さんの傍にいるのは幸せだった?それとも辛かった?」

理屈とか理性とか道徳とか。そんな常識的なもの全て壊れてしまうくらいに惹かれ続けながら傍にいること。

自分という個が崩れていきそうなほど、溢れてくる想い。

そんなものを抱きながら、際限がないと知りつつも離れられない恐怖。

そんなこと手に取るようにわかるよ。嘗てボクも同じ気持ちを味わった。


「あなたが兄さんに惹かれるのは当然だ。だってあなたはボクなんだから。」

まさしく「夢にまで見た兄」との再会。そうだ、ボクは実際夢で見ていた。

錬金術の使えない世界で、ロケット工学とやらに打ち込む兄の姿。

その姿を実際に見ていたのはボクではなく、彼だったのだけれど。


「あなたの目を通してこの世界を見てたなんて凄いよね。」

それは二人が同じ魂を持つから起きたわけという訳ではないのだろう。

きっと二人が同じ人を愛し、より深く同調したからこそ起きた奇跡。

その奇跡が良かったのか悪かったのかは、今になってはわからないけど。


「ねえ、あの人を抱けて幸せだった?それとも更に絶望した?」

完全には手に入れられない心。少しずつ壊れて荒んでいくあの人の傍で、何も出来ない自分。

多分兄さんはこの世界で誰よりもあなたに心を許したはずだ。寂しい時、伸ばされた手を振り解けないくらいには。

絶望していく日々の中、ほんの少しでもあなたに縋ろうとするくらいには。それでも。


「兄さんの全てを手に入れられなくて、苦しんだんじゃないの。」

苦しんで苦しんで時には裏返しの憎しみを抱きながら、葛藤を抱えて傍にいて。あなたはきっと苦しんだはずだ。ーそれでも。


「あなたは一時でもあの人を手に入れた。だから同情はしないよ。」

たとえどんなに兄さんを支えてくれたとしても。たとえどんなにあなたが苦しんだとしても。


「…生きて会えてたら、ボクが殺したかもしれないね。兄さんに触れたその体を切り刻んでいたかもしれない。」

あの人の体に触れた指、滑らかな肌の感触を抱き締めた広い胸、甘く上がる声を聞いた耳。ー口付けたその唇を。

ズタズタに引き裂いていたかもしれない。



あなたが兄に惹かれたのは当然だ。だってあなたはボクなんだから。

だから兄を元の世界に戻す為に命を落としたと聞いても。そのおかげでボクらが再会出来たのだと知っても。


「同情はしないよ。あなたにとってそれが一番の願いだったんだって、ボクには解るから。」

きっと他の誰よりもボクがあなたを一番理解している。

だからこそ、それが他の人にはどんなに酷たらしい死に見えたとしても。それまで傍にいることが苦痛だったとしても。

その命が尽きる瞬間、幸福だっただろうとボクは思う。

兄さんの望みを叶え、兄さんの心に一生残ることに成功して。これ以上ないくらい満足だったのだろうから。


「礼も言わない。幸せに死んでいったあなたに感謝する事なんてひとつもないから。」

ほんの心の片隅でも、兄の心に居続ける人に対して思う事なんてこれしかない。


「あなたのことはとても大好きだけど、同じくらい大嫌いなのは仕方ないよね?」

あなたもボクという存在を知った時。きっと、同じ気持ちだったでしょう。



さよなら、ボクの魂の片割れ。

兄さんの消えない傷となったあなたごと、ボクは兄さんを愛し続けるよ。

だからどうか。全てのことから解放されて安らかにー。



アルフォンスはただ一度だけ、冷たい頬に口付けて。振り返らずにその場を去った。




























うちのアルはこう見えてリヒさんの事好きです。兄さんの事は置いといて。
でも実際自分と同じ人なんて、凄く好きになるか大嫌いになるかどっちかしか無いと思う。

生まれも育ちも性格も違うんだし。

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