駄目な二人














いつものように過ごす、いつもの昼下がり


台所で片づけをしていたアルフォンスの背後から伸びてきた腕は

当たり前のように腰にまとわりついてきた



「兄さん、この腕は何かな?」

「ご覧の通り、兄の腕です」

「そうじゃなくて、何で腰に回ってるのか聞いてるんだけど」

「素直に言っていい?」

「駄目」


素っ気ないアルフォンスの言葉に、兄はぷぅっと頬を膨らませる



「アルがいけないんだぞ。そんな可愛い後ろ姿してるから」

「どういう理屈だよ、それ。見えない後ろ姿なんて責任持てないし。

 大体兄さんの場合、後ろ姿とか関係ないじゃない。この万年絶倫発情男」

「お前はなー、お兄さまに向かってなんて事をだなー」

「否定できるの」

「…できないけど」


あ、でもという事はだ



「まあ、わかってるなら話は早い。という事でやろう。今すぐしよう、そうしよう」

「ちょっと!どこをどうしたらそうなるんだよ!」

「ん?だって兄ちゃんがお前に常に発情してるって解ってるって事だろ?」

「だからって、こっちも常にOKだなんて思わないでよね!」

「アルは嫌なのか?」

「嫌って言うか、そろそろ危険日なんだよ」

その言葉に、アルを腕の中に閉じこめたままカレンダーを見る兄



「でもアルの危険日は5日後だよな?その前後3日間がヤバイ訳だから、今日は大丈夫だろ?」

「理屈でいくとそうなんだけど、排卵日なんて体調次第でずれるんだよ?

 それに兄さんのって3日どころかそれ以上生き延びそうでヤダ」

「お前は兄ちゃんを激しく誤解しているぞ」

「そうかな。誰よりも理解してると思うけど?」



理解してると言ってくれてるのに、何だかあんまり嬉しく感じないのはー、この場合仕方ない

だけどだな、アルフォンス



「それにもしそうなっても、俺は全然OKというかむしろ大歓迎なんだけど」

「勝手な事言わないでよ。生むのは誰だと思ってるのさ」

「俺が生めるなら生んでも良いけど、この場合はお前だな」

「馬鹿な事言ってないで。大騒ぎになるよ」

「だけどさ。きっと可愛いぞ、お前と俺の子供。俺としてはお前に似た可愛い女の子が良いなー」


嬉しそうに言う兄の言葉にふと考える

僕に似た女の子ねー。でもどっちかと言うと、



「僕は兄さんに似た男の子が良いな…」

ぽつりと言ってからハッと気付いて兄の顔を見上げると、そこにはだらしなくニンマリとした兄の顔



兄は抱き締めていたアルフォンスの体をひょいっと抱き上げた



「そうかそうか、やっとアルもその気になってくれたか!」

「ち・違う!前言撤回!!その気になんてなってないから!」

「注意一秒怪我一生、言った言葉は取り消せないんだぞアル」

「どこの国のいつの言葉だよ、それ!」

「まあまあ、細かい事は気にせずに」

「気にする!っていうか降ろしてよ!」

「アルがそんなに心配なんだったら、ちゃんと避妊するって」

「避妊だって完璧じゃないんだよ!ちょっとは我慢してよ!」

「大丈夫、兄の辞書に不可能の文字はない。ついでに我慢と忍耐の文字もない」

「それって威張って言う事じゃないだろー!!」













叫びながら、お持ち帰り状態で兄に抱えられたまま寝室へと運ばれるアルフォンス


まあ、その結末はー。結局兄に甘いアルフォンスが美味しく戴かれたという事で決着


















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