甘い生活
ふと目が覚めるとまだ夜明け前だった
見上げる天井は最近やっと見慣れてきたもの
以前は兄の、そして現在は僕達二人の寝室の天井
隣に眠るのは、僕のたった一人の兄で、たった一人の…愛しい人
この頃こういう状況にも慣れてきた
最初の頃は、朝目覚める度に横で眠る兄の姿にパニックを起こしそうになったものだったが
大体、その、翌朝に顔を合わせるのって、物凄く気恥ずかしくって堪らないし
・・・それは今でも変わらないのだけど
何だか喉が渇いたな
水でも飲もうと上掛けを身に纏ってベッドサイドに腰掛けると、後ろから手が伸びてきた
「うわっ、って兄さん!?」
「何処行くんだよ、アル」
半分寝ぼけ眼のまま、がっしりとアルフォンスの体を引き寄せようとするエドワード
その姿に苦笑して、腰に回った腕を軽く抓った
「ビックリさせないでよね。喉が渇いたから水を飲もうと起きただけだよ」
「そういえば、何だか声が嗄れてるな」
「誰のせいだろうね」
その言葉に一瞬腕の力が弛む。あ、少しは反省してるのかな?
サイドテーブルの水差しからコップに水を注ぐと、アルフォンスは乾いた喉を潤した
瞬間、ちらりと目に入った自分の太股に、鮮やかに散る赤い模様が見えて溜め息が洩れる
兄さんもさ、最初の頃は慣れてない僕を気遣って、多分物凄く手加減してくれてたんだろうけど
壊れ物を扱うみたいに、恐々と触れてくれるのも何だか嬉しかったんだけどな
最近じゃ結構手加減無しだ
大事にしてくれてるのは変わらないんだけど
それに見える所に痕を付けないでって言ったら、見えない所には遠慮無しにつけるようになるし
…別にそれがどうしても嫌って訳でも無いけどさ
そろそろと復活したのか、腰に回る兄の腕の力が強くなる
そのままずりずりと後ろへと引き戻されてしまう
「にいさーん」
前言撤回。反省なんてしてないよ、この人
呆れたように振り返る僕の目に、子供のようににっこりと笑う兄の顔が目に入る
あー、もう。そんな可愛い顔したって駄目なんだからね
僕の抗議の声を物ともせずに、兄さんは僕の体をぐいぐいと引き寄せると
自分の腕の中に閉じこめてしまった
そうされてしまうと、僕にはもう抵抗する術がない
本当は振り解けるはずなのに
背中に伝わる兄の温もりが心地よくて
抱き締める違う体温の両腕が愛おしくて
僕は抵抗を忘れてしまう
これは結局兄に甘い僕が悪いのか
それとも確信犯な兄が悪いのか
…どっちもなんだろうな
だから僕は諦めて体から力を抜くと
近づいてくる兄の唇を受け止める為に目を閉じた
・・・明日起きれなかったら、一日家事をやらせてやる
弟の密かな決意を、兄は知らない
25000HITのリクエスト。ご申告は丈さん
『年相応エドアルでエド←アル寄りで幸せな話
「相変わらずな二人」のようなちょっとエッチ(苦笑)な雰囲気』
とのリクエストでした
リク内容に添えているでしょうか…?(ビクビク)
丈さん、いつも拍手感想ありがとうございます!
これからもよろしくお願い致します!