一言だけのラブレター










好きだ、とお前に伝えることよりも
好きだ、とお前に信じさせることの方が難しい
繰り返し告げた言葉はお前の中を滑り落ちて、きっと欠片も残らない




兄弟じゃなければと思う時がある
兄弟だからこそと思う時もある
出会えない不幸に比べたら
出会えた事で始まる不幸など何でもない




煌々と輝く月をぼんやり見ていたら、流れ星をひとつ見つけた
同じ月、同じ星を、今お前も見ているだろうか




傷だらけの体を抱き締める
優しさの分だけ自分を傷つけるお前が愛おしく、同じくらい哀しく腹立たしい
日毎薄くなる傷痕を追って新しくついていく傷痕に
口付けするたび苦しくなるこの心を、お前は知っているはずなのに
ごめんと謝りながらも繰り返すお前は
少しずつこの心を壊しながら、それでも俺を捉えて離さない
いっそ心が無くなれば楽になれるだろうに
お前を愛する心だけは手放せない俺は、何と滑稽な存在なのか




愛してると告げるとはにかんだように笑う
愛しさと同時に湧き上がるのは焦燥感
お前の傍にいることを許された時間はあまりに短い
少しずつ大人になっていくお前がいつか俺から離れていく時まで
残された時間はあまりに短い




愛してると囁きながら、お前は俺を信じていない
勝手に俺を解った気になって、勝手に俺がいつか離れていくと思っている

冗談じゃねえぞクソ兄貴

お前が俺を諦められなかったように、俺もお前を諦められなかった
年食ったくらいで離れられるようなら、お前がいなくなった時に諦められたんだ
そんな簡単な事も解らないなんて、変な所で馬鹿なんだよなお前って
しつこさに関してはよく似た兄弟なんだってこと、早く認めて観念しやがれ









2008.2.24

Novel